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コラム  アーカイブ (8)

7月18日(火) 月暦・水無月(六月)二十三日 下弦  
最近、あまり耳にしないな〜」
 春から夏にかけて、毎日鳥の声を聴く。
夜明けの寝床で聞く数種類の鳥の声から始まって、
昼間も、ふっと我に返るといろんな鳥の声を聴く。
「あの鳴き声は、なんだろう」、
「そういえば、最近カッコーやフクロウの鳴き声を聴いていないな〜」
などと思いつつ、鳥の姿と鳴き声を一致させたくて、
パソコンで見る、聴く、野鳥の事典ソフトを買った。

 事典で見ると、昔から万葉集で詠まれたり、美声ゆえに鳥かごで飼われたり、
その鳴き声で季節を告げたり、農作業にとって益鳥であったり、
またその逆で、田や畑の作物を荒らす害鳥であったり、と
ずいぶん人間の暮らしと密接に関わってきたものだと、
自分ながらに、こんなにもたくさんの鳥の名前を知っていたのだと、
勝手に感心したりと、なかなか面白いものです。

 鳥もそうですが、暮らしの中で聴いた懐かしい、匂いたつような夏の音。
周囲の音をすべて消してしまうような大音響の蝉の声。
朝に夕暮れに鳴く、ちょっともの悲しいカナカナの響き、ひぐらしの音。
金魚売りの掛け声、カキ氷のガラガラ、ツリシノブの下で揺れる風鈴の音。
夏祭り、盆踊りの広場から風に乗って流れ聞こえる蓄音機の民謡、太鼓の音。
打ち上げ花火に子供達の歓声。

 生活とともに響いていたたくさんの音。
これも生活が変わり、時代がノスタルジックな音を消していく。
  
7月11日(火) 月暦・水無月(六月)十六日 満月  
最近、あまり見かけないな〜
 このあいだ、深夜0時過ぎ、東京からの帰り、中央高速を上の原で降りて、
山道を家に向かって走っていて、ほんとうに久しぶりに蛍を見ることができました。
小さな川沿いの道で 、道路脇にポツリと光るもの。
何の準備もない、不意をつかれて、最初それが蛍だとは気づかないほどでした。
二つ、三つと目に入って初めて、「あ〜、」と、気づきました。
闇夜にポッと浮かぶ光の点在は、車の走る一瞬の窓越しに、
夏の風情と情緒を残して、懐かしい気分を思い起こさせました。

 蛍に限らず、最近トンと見かけなくなったものがたくさん在ります。
特に夏に限って言うと、
スイカやトマト、野菜などを湧き水や井戸水で冷やす水場の風景。
簾の縁側に鳴る風鈴。
青空にモクモクト広がる入道雲に、オニヤンマ、ほちゅう網。
白いランニングシャツに麦藁帽子、黒く日に焼けた小学生。
などなど、今ではありがちなドラマの回想シーンにしか出てこないような
日常の暮らしの一コマの風景。

 十年ちょっと前、ここに来たばかりの頃にはこの山里に確かにあった
あの風景、あの気分。
十年の間に、村の人口は2割近く減ったけれど、山や川の自然、家並みなどは、
ほとんど変っていないというのに。
昔の感触、暮らしの情緒が消えていく。

 たぶん、風景そのものは何にも変っていないのだと思う。
そこに住む人間の精神(こころ)が変容していくのだ。
東京にいく時間が短縮されたり、いろんなものが便利になっていく変りに。

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